pH中和理論
炭酸ガスによるアルカリ中和限界
セメント中の水酸化カルシウム(Ca(OH)2)によるアルカリ排水の炭酸ガスでのpH中和限界点を物理的に算出する。アルカリ中和限界点はアルカリ中和における炭酸ガス必要量と炭酸ガスが水解する限界量をアルカリ中和理論限界値とする。
1.炭酸ガスの物理・化学的性質
表-1.水1リッターに溶けるCO2のガス容積
2.炭酸ガスによるpH中和反応の概要
炭酸ガスがpH中和するのでは無く、炭酸ガスが水に反応して炭酸を生成する、その炭酸が第1段反応として水酸化カルシウムを炭酸カルシウムと水に中和生成する。炭酸カルシウムは水に不溶性の白濁した生成物で、配管やポンプ等にスケールとして付着する。第2段反応として炭酸カルシウムにさらに炭酸を加えると炭酸水素カルシウムを生成する。炭酸水素カルシウムは水に溶解し無色透明となり、スケールの付着を防止する。この反応は同時におこり、炭酸ガスはpH中和量の2倍が必要となる。
3.炭酸ガス溶解量
炭酸ガスが水に溶解する容量は表-1の通りであり、そのグラフにより溶解量をまとめると下記の表-2の通りになる。炭酸ガスの気化後の温度を0℃とし気化密度を1.977kg/m3とする。また、炭酸ガスの注入圧を2kg/cm2とする。
表-2.炭酸ガス溶解容積
4.中和限界値
炭酸ガス溶解量よりアルカリ中和の限界点を算出する。ただし、溶解量にはSS等の影響を受けないものとする。
水温25℃での炭酸ガスの溶解量は2.867kg/m3であり、その量でのアルカリ中和点は下記の通りとなる。
水温25℃での炭酸ガスの溶解量でのpH中和値は、pH12.52であり、それを超えると炭酸カルシウムによる白濁がおこり、次第にpH処理不能となる。
表-3.中和限界点
5.まとめ
炭酸ガスによるpH中和は炭酸ガスが水に溶解する溶解量により制約をうける。炭酸ガスによるpH中和は炭酸ガスの実際量より、上表-3になる。中和限界点表(表-3)は炭酸ガス溶解量からの理論量であり、案際は炭酸ガスの溶解時にSS、他の物質等の溶解阻害物により溶解量が制約を受け、限界点以下となる。従って、炭酸ガスによるpH中和処理の計画は限界点pH12以下、pH11程度が望ましい。炭酸ガスの過剰添加によるpH低下は、炭酸ガスと水の反応生成物が反応式の通り炭酸の生成であり、pH5前後の弱酸性で、強酸性にはならず安全性にはすぐれている。
硫酸(希硫酸)に係る規制状況
希硫酸の保管・使用に関する規制は下記の通りです。
1)消防法
2)毒物及び劇物取締法
3)労働安全衛生法 労働安全衛生規則
特定化学物質等障害予防規則
1)消防法
●消防法では、硫酸は非危険物として取り扱われているが、硫酸濃度が60%を超えるものについては、「消防活動阻害物質」と指定されている。
【消防活動阻害物質の届出制度】
第九条の三第一項
圧縮アセチレンガス、液化石油ガスその他の火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質で政令で定めるものを貯蔵し、又は取り扱う者は、あらかじめ、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。ただし、船舶、自動車、航空機、鉄道又は軌道により貯蔵し、又は取り扱う場合その他政令で定める場合は、この限りでない。
※1希硫酸60%以下を除き、200kg以上を超えるものに対し、適用される。
※2消防活動阻害物質は実際の消火活動の際にその存在がわかるように届出制度を設けているのであって、その保管方法には関知しない。(日本橋消防署の見解)
※3特化法は事業者の質務を定めたものなので、特化法では届出義務はありません。(中央労働基準監督所の見解)
2)毒物及び劇物取締法
●毒劇法では、硫酸濃度が10%を超えるものについては、「劇物」と指定されている。
【毒物又は劇物の取扱】
第十一条
1.毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、毒物又は劇物が盗難にあい、又は紛失することを防ぐのに必要な措置を講じなければならない。
2.毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、毒物若しくは劇物又は毒物若しくは劇物を含有する物であって政令で定めるものがその製造所、営業所若しくは店舗又は研究所の外に飛散し、漏れ、流れ出、若しくはしみ出、又はこれらの施設の地下にしみ込むことを防ぐのに必要な措置を講じなければならない。
3.毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、その製造所、営業所若しくは店舗又は研究所の外において毒物若しくは劇物又は前項の政令で定める物を運搬する場合には、これらの物が飛散し、漏れ、流れ出、又はしみ出ることを防ぐのに必要な措置を講じなければならない。
4.毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、毒物又は厚生労働省令で定める劇物については、その容器として、飲食物の容器として通常使用される物を使用してはならない。
【毒物又は劇物の表示】
第十二条第一項
毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、毒物又は劇物の容器及び被包に、「医薬用外」の文字及び毒物については赤地に白色をもって「毒物」の文字、劇物については白地に赤色をもって「劇物」の文字を表示しなければならない。
【事故の際の措置】
第十六条の二
1.毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、その取扱いに係る毒物若しくは劇物又は第十一条第二項に規定する政令で定める物が飛散し、漏れ、流れ出、しみ出、又は地下にしみ込んだ場合において、不特定又は多数の者について保健衛生上の危害が生ずるおそれがあるときは、直ちに、その旨を保健所、警察署又は消防機関に届け出るとともに、保健衛生上の危害を防止するために必要な応急の措置を講じなければならない。
2.毒物劇物営業者及び特定毒物研究者は、その取扱いに係る毒物又は劇物が盗難にあい、又は紛失したときは、直ちに、その旨を警察署に届け出なければならない。
3)労働安全衛生法
●労働安全衛生法では、硫酸は特定化学物質として取り扱われており、硫酸濃度が1%を超えるものについては「第3類物質」と指定されている。設置する場合は、様式20号による届書に、当該機械の種類に応じて同表の中欄に掲げる事項を記載した書面及び図面等を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
【計画の届出等】
第八十八条第一、二項
1.事業者は、当該事業場の業種及び規模が政令で定めるものに該当する場合において、当該事業場に係る建設物若しくは機械等(仮設の建設物又は機械等で厚生労働省令で定めるものを除く。)を設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の三十日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。ただし、第二十八条の二第一項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。
2.前項の規定は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとする事業者(同項本文の事業者を除く。)について準用する。
【作業主任者】
第十四条
事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
【安全衛生教育】
第五十九条
1.事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2.前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3.事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。
労働安全衛生規則
【作業主任者の選任】
第十六条
1.法第十四条の規定による作業主任者の選任は、別表第一の上欄に掲げる作業の区分に応じて、同表の中欄に掲げる資格を有する者のうちから行なうものとし、その作業主任者の名称は、同表の下欄に掲げるとおりとする。
2.事業者は、令第六条第十七号 の作業のうち、高圧ガス保安法 (昭和二十六年法律第二百四号)、ガス事業法 (昭和二十九年法律第五十一号)又は電気事業法 (昭和三十九年法律第百七十号)の適用を受ける第一種圧力容器の取扱いの作業については、前項の規定にかかわらず、ボイラー及び圧力容器安全規則 (昭和四十七年労働省令第三十三号。以下「ボイラー則」という。)の定めるところにより、特定第一種圧力容器取扱作業主任者免許を受けた者のうちから第一種圧力容器取扱作業主任者を選任することができる。
作業の区分 | 資格を有する者 | 名称 |
---|---|---|
令第六条第十八号の作業のうち、次の項に掲げる作業以外の作業 | 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習を修了した者 | 特定化学物質作業主任者 |
令第六条第十八号の作業のうち、令別表第三第二号3の3若しくは19の2に掲げる物又は同号37に掲げる物で同号3の3若しくは19の2に係るものに掲げる物を製造し、又は取り扱う作業 | 有機溶剤作業主任者技能講習を修了した者 | 特定化学物質作業主任者(エチルベンゼン等関係) |
特定化学物質等障害予防規則
●特化法は事業者の質務を定めたものなので、特化法では届出義務はありません。(中央労働基準監督所の見解)
【排液処理】
第十一条第一、二項
1.事業者は、次の表の上欄に掲げる物を含有する排液(第一類物質を製造する設備からの排液を除く。)については、同表の下欄に掲げるいずれかの処理方式による排液処理装置又はこれらと同等以上の性能を有する排液処理装置を設けなければならない。
2.事業者は、前項の排液処理装置又は当該排液処理装置に通じる排水溝若しくはピットについては、塩酸、硝酸又は硫酸を含有する排液とシアン化カリウム若しくはシアン化ナトリウム又は硫化ナトリウムを含有する排液とが混合することにより、シアン化水素又は硫化水素が発生するおそれのあるときは、これらの排液が混合しない構造のものとしなければならない。
【ぼろ等の処理】
第十二条のニ
事業者は、特定化学物質(表略)により汚染されたぼろ、紙くず等については、労働者が当該特定化学物質により汚染されることを防止するため、ふた又は栓をした不浸透性の容器に納めておく等の措置を講じなければならない。
【接合部の漏えい防止措置】
第十四条
事業者は、特定化学設備のふた板、フランジ、バルブ、コック等の接合部については、当該接合部から第三類物質等が漏えいすることを防止するため、ガスケットを使用し、接合面を相互に密接させる等の措置を講じなければならない。
【床】
第二十一条
事業者は、第一類物質を取り扱う作業場(第一類物質を製造する事業場において当該第一類物質を取り扱う作業場を除く。)、オーラミン等又は管理第二類物質を製造し、又は取り扱う作業場及び特定化学設備を設置する屋内作業場の床を不浸透性の材料で造らなければならない。
【立入禁止措置】
第二十四条
事業者は、次の作業場には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない。
一.第一類物質又は第二類物質(表略)を製造し、又は取り扱う作業場(臭化メチル等を用いて燻蒸作業を行う作業場を除く。)
二.特定化学設備を設置する作業場又は特定化学設備を設置する作業場以外の作業場で第三類物質等を合計百リットル以上取り扱うもの
【容器等】
第二十五条第一から四項
1.事業者は、特定化学物質を運搬し、又は貯蔵するときは、当該物質が漏れ、こぼれる等のおそれがないように、堅固な容器を使用し、又は確実な包装をしなければならない。
2.事業者は、前項の容器又は包装の見やすい箇所に当該物質の名称及び取扱い上の注意事項を表示しなければならない。
3.事業者は、特定化学物質の保管については、一定の場所を定めておかなければならない。
4.事業者は、特定化学物質の運搬、貯蔵等のために使用した容器又は包装については、当該物質が発散しないような措置を講じ、保管するときは、一定の場所を定めて集積しておかなければならない。
【緊急診断】
第四十二条第一項
事業者は、特定化学物質が漏えいした場合において、労働者が当該特定化学物質により汚染され、又は当該特定化学物質を吸入したときは、遅滞なく、当該労働者に医師による診察又は処置を受けさせなければならない。