汚水処理の凝集沈殿の原理
1. 凝集沈殿とは
一般に、天然の汚濁はコロイド溶液の性質を有するものが多く、負の電荷を有し、これが互いに反発し合って安定の状況に存在している。各粒子は同種のイオンによって覆われているので粒子が衝突しようとすると、互いに反発し合い、粒子と粒子が結合することができず、凝集作用がおこらない。そこで、凝集剤を添加して各粒子を凝集させ沈殿速度を大きくして、小容量の沈殿池で懸濁物を沈殿させ固液分離する方法が凝集沈殿である。
2. 凝集剤のイオン性による表面電位の中和
一般に土粒子は負に帯電しているので、この電荷を中和するために正の電荷をもつ凝集剤(無機凝集剤や高分子凝集剤のカチオン系のもの)で表面電位を消失させて、土粒子相互の反発力を弱め、凝集させやすくする。
一般に土粒子の表面荷電の強さはMゼータ電位で-20~-30mV程度の範囲に分布しているが、荷電中和を行い、懸濁粒子群のゼータ電位が大略±10mVの範囲内に入る程度にしてやると、粒子間の引力(London Van der Waal’s force)が表面電荷の反発力を上回り、粒子はたがいに結合する。水酸化アルミニウムは吸着力が強いので粒子の結合は進み、大きなフロック(10-2~10-1cm)を生成し、沈殿が促進される。
土粒子の表面電位はpHによって変化し、この電位を零とするpHを等電位点とよんでいる。溶液のpHがこの等電位点に近づくと表面電位は消失し、凝集が始まる。
凝集適正pH範囲
3. 凝集剤の吸着に基づく架橋吸着
懸濁物の土粒子を凝集させてより大きなフロックを形成する方法として、高分子凝集剤による架橋吸着作用がある。鎖状の高分子の一端がある土粒子に吸着し、土粒子間を架橋する。この架橋された粒子が、それぞれ勝手にランダムな運動をし、他の高分子の鎖に衝突し、粒子が集まりはじめ、巨大なフロック(肉眼で観察できる程度の粒子)を生成し、沈降を容易にする。